「夏の雪原」(8/17)

yamada

 

 

 

日本中、

8月に雪が降る地域はどこを探しても見つからないと思うけれど

 

 

この季節に出会った「ライ」は雪のように繊細で

 

その白さから目に浮かんだのは

両手いっぱいに広がる雪原の風景

 

まるで8月に現れた雪の原っぱのようだった

 

 

 

 

 

 

白だけでも600色存在すると聞いたことがあるけれど

雪に隠れた、真っ白いうさぎを

そこから見つけ出すことは

やはり難しいことなのだろうと

膨大な白の数からも容易に想像することができた

 

 

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そして

600色もある中から

「ライ」の色を見つけ出すことも、同じように難しそうで

 

想像を超える未知の領域に

わたしは目を白黒させるだけで精いっぱいだった

 

 

 

けれど、一つ言えることは

 

「ライ」の色は

夏の白とうたわれるたぐいの”白”とは

少し違うということだ

 

 

 

例えれば

 

窓からこぼれる部屋の明かりが

 

白い生地のうえに落とした

“ ろうそくの影の色 “

 

とでも表したくなるような

 

 

温度を感じる温もりが

そこにはあって

 

それは、夏のはじけた感じとは真逆の色だと言える

 

 

 

こっくりとした生地の陰影には

夏にみる

日陰と日向のようなくっきりとした境目はなく

 

 

みる人にも

 

手に取る人にも

 

暖炉のそばにいるような

ぬくもりがじんわりと伝わっているように感じた

 

 

 

 

 

「ライ」を通してみた幻の夏の雪原は

 

今はまだ涼しそうな印象でそこにあるけれど

 

秋が深まってくるころには

きっと肌で感じる暖炉のほのおのあるシチュエーションが

待っていることだろう

 

 

その季節が待ち遠しくて

 

 

「ライ」に重ねたニットがかかるハンガーを

わたしはなかなかしまうことができず

 

 

いつまでもいつまでも

その先にある雪原の風景から

目をそらすことができなかった

 

 

 

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